2 全 体 構 想

1) テーマ「自 然」

まちと自然

 私たちのまちのこれからの姿を考える時に自然環境のことを抜きに考えることは出来ません。都市は水や大気の循環、地形といった自然の骨組みの上に成り立っているからです。また、自然の一部である私たち自身にとって、森や農地などの豊かな緑はそこから人にとっての食べ物や水を生み出すばかりでなく、夏の日差しを和らげ、まちに潤いを与え、美しい風景を作ります。また、さまざまな生きものたちが暮らす場ともなります。
 しかし、私たちの暮らしは自然を壊すことによって成り立っていることも事実です。国立の緑はもともとこの場所に暮らしてきた人々の手によって長い間守られたり作り替えられたりしてきたものです。たとえば、国立駅のまわりに広がる街は薪や炭や腐葉土を作っていた雑木林を切り開いて作られました。高度経済成長期以降人々の暮らし方が違ってきたことで、昭和30年代にはどこにでも見られた雑木林や水路、小川などは本当に貴重なものになり、さまざまな生きものやそれを追う子どもたちの姿もまれになってしまいました。
 私たちは、これから20年後の国立のあり方を考える時、このまちに住み続けていくためには、今残っている自然を守っていくことに加え、市民が積極的にみどりに親しみ、増やしていくことが必要だと考えます。また、自然のしくみを活かし、ここに住み続けていた多くの生きものと共に暮らしていくためには、自然環境を守ってきた多くの人々の暮らしに学び、それを活かしていく市民の知恵や努力が必要です。
 私たちは受け継がれてきた地域の環境を守り、増やしながら、そこに暮らす人々の暮らしと調和するようにより良い自然との付き合い方を学び、多様な生きものと一緒にこの場所で住みつづけていくための提案となることを望みます。

テーマ「自 然」

「守り、つなげる、国立の自然 ―共生と循環―」

理念1 水・緑・生き物と共に学び、暮らす
A 水辺の生きものと暮らす
B 農地やハケを守る
理念2 人の暮らしにつながる自然
A 雑木林を守り、育てる
B まちに暮らす生き物たち
理念3 身近な自然を暮らしにいかす
A 住宅地の緑
B 身近な緑を守り、つくる
C 自然を暮らしに生かす
理念4 水と緑をつなぎ、大切にするしくみづくり
A 自然を知る・伝える
B 情報を集める・貯める
C 緑を守る・育てる
D 自然をむすぶ・つなぐ

「守り、つなげる、国立の自然 ―共生と循環―」

理念1 水・緑・生き物と共に学び、暮らす

   ― 湧水・水路・崖線(ハケ)・農地(水田・畑)など

項目 現況 課題 方針
A 水辺の生きものと暮らす
  1. 水辺の環境が土地利用の移り変わりとともに、変化してきており、動植物の生息環境としては悪くなってきている。
  2. かつて(昭和30年代)身近によく見受けられた動植物をあまり見かけなくなった。
  3. 水路や用水の水ぎわなどがコンクリート等により施工され生物の生息する環境が悪化し、なくなりつつある。
  4. 生活環境の変化に伴って、ママ下湧水や崖線林、水田の環境が変わり、自然環境の質や生物生息環境も少しずつ変わってきた。(ママ下周辺の生きものをはぐくんできた環境の変化、ハケと湧水と水田と用水路が一体となった歴史的農環境の崩壊)
  1. 現存する生物生息環境の保全と維持。
  2. 生物生息域としての崖線の位置づけ。
  3. 道路などの整備による影響を低減する工夫。
  4. 特定の種の生息ではなく生態系としての総合的な視点からの環境管理を行う必要がある。
  5. 農地、湧水、ハケ、崖線林の環境の一体的な保全。
  6. 水路や小川における自然環境の回復。−特に水ぎわの多様な生物生息環境の復元。
  7. 通水性のある護岸の復元など小動物の生息しやすい水辺環境の創出。
  8. 区画整理に伴う水路の整備は、直線的あるいは不自然な曲線となり、生物が有機的に生息しにくい環境を生んでしまう。
  1. 自然環境の維持や保全を行政と市民が協働で行う。−身近な自然環境の市民自らの保全と利用。
  2. 昭和30年代よく見受けられた動植物の復活。
  3. 府中用水などの年間通水による、水環境、生物生息環境の確保。−人も生物も利用する緑の回廊。
  4. 木杭、粗朶※等自然の材料を使った水ぎわの整備。
  5. ナガエミクリ、ミゾソバなどの水生植物が生える水辺を作る。
  6. バリアフリーにも配慮した水辺の散策道の整備。
  7. 矢川、湧水、府中用水、多摩川などの利水や環境を把握するための調査と保全。
  8. 小魚などが隠れる場所を伴った水辺の生物のための整備。
B 農地やハケを守る
  1. 人は自然から恩恵を受けているにもかかわらずその大切さを忘れてしまっている。−生きものと人が共存していることを見失いがち。
  2. 水田や畑などの農地が相続や生産物の値崩れなどにより維持が困難になってきており、減少してきている。−生産緑地も減少。
  3. 地場農産物の市内消費量が少ない。
  4. 非農家の市民にとって生活の場の中にある農地の意味を考える機会が減っている。
  5. ハケ(青柳崖線)の重要地点に都道3・3・15号線が通ることになっており、湧水を始め周辺環境への影響も避けられない。
  6. 国立でもっとも生きもの多様性が保たれてきたハケ周辺に開発が迫っている。
  7. ハケ上に都市計画道路3・4・3号線の計画がある。
  1. 木や葉や草も私たちの生活に欠かせないものであることを考える必要がある。
  2. 住宅地や農地の細分化されないための対策。
  3. 区画整理等でも緑地を確保する。
  4. 今ある川や水路を利水、環境の両面から見直す必要がある。
  5. 水路やあぜ道を利用して地域で親しまれてきた祠や鎮守の森など自然や文化的な遺産をつなぎ継承していく。−御獄神社、青柳稲荷、御鷹の森や周辺の農地、崖線の緑など。
  6. 農業が生業として成り立つしくみづくり。
  7. 都道3・3・15号線、区画整理などによりもたらされるであろう自然環境への影響を最小にとどめる対策。
  8. ハケ周辺に生きものがすみやすい環境を整える。
  9. 3・4・3号線は貴重な緑を分断し、湧水に影響を与える恐れがあり、対策が必要である。
  1. 水田等での有機農法の推進。−フナ、ドジョウ やタニシなどが生息する環境をよみがえらせる。
  2. 有機栽培、減農薬栽培等の奨励。−腐葉土(たい肥)の積極的な使用など。
  3. 歴史的資源と水辺をつなぐ散策道の整備。−既存の散歩道との連携。
  4. 後継者が育つなど継続的な農業の振興策の工夫。
  5. 市民が広くまちの環境について知る機会を設ける。
  6. 都道3・3・15号線計画における環境への影響が最小限となるようシミュレーションを行い検討する。
  7. 水田や城山、ハケなどで鳥や魚、昆虫が繁殖しやすい環境にしていく。
  8. 生きものの多様性を考慮した環境の保全と創出。−環境の連続性の確保。
  9. 緑の基本計画策定委員会や専門家等との協力。
  10. ハケの環境に影響を及ぼす大きな道路は造らない。

※注:粗朶(そだ):切り取った樹木の枝や細い幹。薪などの燃料や堤を築く材料などに使われた

理念2 人の暮らしにつながる自然

   ― 緑地・公園・学校・道路・歴史的資源など

項目 現況 課題 方針
A 雑木林を守り、育てる
  1. 東・中・西地域は、かつて雑木林として利用されてきたが、その面影が一橋大学の中に一部残存する。
  2. 南武線南側の御鷹の森には武蔵野の名残である雑木林がわずかにある。
  3. 市内に残る雑木林もこの20年でほとんどが消失している。
  1. 市内各所に点在している雑木林の保全と再生。
  2. 新しく整備される公園の植生も考慮する。
  3. 既設の公園についても広域的視野で植生を見直す必要がある。
  4. 残存する雑木林の土壌、下草が貧弱になっている。
  5. 生きものを活かした多様な広場を作る。−芝生広場など。
  1. 残存する雑木林の調査、研究と活用。−環境学習や生涯学習など。
  2. 地域や個人、学校、企業、行政が協力して緑化協定を結ぶ。−話し合いの場の設置。
  3. 社寺林などは歴史的、文化的な資源として位置づけ、保全を行う。
  4. 雑木林や原っぱの公園の整備。
  5. 一橋大学の林や池の環境改善による生物生息域の拡充。
B まちに暮らす生きものたち
  1. 東西に伸びたハケの樹林帯(崖線林)は多くの生きものたちが行き来していて、国立の緑のネットワークの中で大変重要だったが、道路などによる分断のおそれがある。
  2. 子どもの遊び場としての原っぱが、多摩川河川敷以外にない。
  3. 市街地の公園に生きものの生息や飛来に適した環境がない。
  4. 公園、街路樹などの緑地帯には生きものが少ない。
  5. 街路樹や住宅地で生物生息に配慮した樹種があまり植えられていない。
  6. 公共緑地の土壌の乾燥化、踏みしめによる酸欠化。
  7. 公共緑地や学校、公園等にほとんど開放水面(池、親水施設)がない。
  8. 旧甲州街道などの歴史的遺産が分断、開発により存続の危機に瀕している。
  1. 生きもののすめる公園づくりや市民参加の公園づくりの推進。
  2. 道路などの整備における自然環境の位置づけがされていない。
  3. 自然環境を軸にした人がかかわる空間(公園や道や住宅地)の整備。
  4. 学校や公園などで緑の量を増やす。
  5. 施設整備に対する、自然環境面からの対応策の検討。(例えば都市計画道路建設や区画整理。−ハケ周辺、放置すれば確実に減る緑と自然環境)
  6. 生物生息に配慮した多様性に富んだ環境づくりを行う必要がある。
  7. 落ち葉のたい肥化と活用をより推進し、市民への理解を求める。−農業への活用など。
  8. 生きものが生息できる水辺や水路を新設する努力が必要である。
  1. 緑を分断しないような道路構造にする。−道路の下に大きな空間を作る、道路の上に植物で緑のトンネルになるように工夫し、緑の帯をつなげるなど。
  2. やむをえない公共事業の中では自然や生き物への負担、影響を最小限にとどめる。
  3. 街路灯などの光が生物へ与える影響の低減。(都道3・3・15号線等の整備等)−持続可能な生物生息環境づくり。
  4. 公園や街路樹、学校などの樹木に木の種類(名前)を表示する。
  5. 生物の生息に配慮した樹木への転換を行う。
  6. 学校に雑木林やトンボ池などをつくり、教育、学習などへ活用すると共に、生きものの小拠点とする。
  7. 公園などの植裁でも質に対する配慮を行う。
  8. 公園管理等への自然環境に理解のあるボランティアや高齢者の参加。−人材の育成。
  9. 緑地の連続性を確保し、人がこれを利用するために、資源を活用した散策路の連携を図る。

理念3 身近な自然を暮らしにいかす

   ― 住宅地(個人住宅・集合住宅)・商業地など

項目 現況 課題 方針
A 住宅地の緑
  1. 住宅の「緑」は、市街地では貴重である。
  2. 個人所有の「緑」の保全は、不安定要因が多い。
  3. ガーデニングブームにあって個人の庭の植栽が洋風化する傾向にある。
  4. 土地の細分化により緑地も細分化、消滅してきている。−ミニ開発等による住宅地の緑の減少、増えた緑よりも失われた緑の方が多いという現実。
  5. 個人所有の生産緑地等が相続により売却され、マンション等に変わっていく結果としての緑の減少。
  1. 生け垣等の保存方法の改善。
  2. 個人の家の緑を守るための方法の検討。
  3. 個人の庭が作る連続する緑を大切にする。
  4. 生態系にも配慮した植物の奨励など。
  5. 開発の時にできるだけ多く緑地を確保する。
  6. 開発に伴う緑化義務などの条例化。−罰則等を含む。
  1. 住宅地や街路樹にもっと野鳥などが好む実のなる木を増やす。
  2. 生け垣や大木の保全のための基金、補助金の設立。
  3. 生きものに配慮した樹木の住宅への植樹の奨励。−補助金制度等の設定。
  4. 最低敷地面積の設定などによる敷地の分割の制限。−緑地確保の目標設定。(例えば30%など)
  5. マンション開発や商業ビル建設時の屋上緑化、壁面緑化、または建ぺい率の抑制などの自発的寄与を準義務化する。
  6. 個人庭園、生垣等の好例を市で表彰する制度の設置。
B 身近な緑を守りつくる
  1. 屋敷林や生け垣などの維持、保全が所有者に委ねられている。−わずかな補助金が支給されている。
  2. 屋敷林と屋敷林をつなぐ沿道緑地の保全や草地、農地を囲む外周緑地の保全が困難となっている。
  3. 公共的な場所の緑化を進めるしくみがない。
  1. 特に高木の落ち葉や日照など、周辺とののかかわりの問題。
  2. 相続や手入れ等の負担の軽減。
  3. 緑地や低木地を伴う私道や農道の保全がほとんど行われていない。
  4. 保全のしくみがないため所有者や地域に負担させるに止まっている。
  5. 駐車場等の周辺への植裁を推進する。
  6. 公共施設、企業、商店街等での緑化や植樹の奨励。
  1. 土手、生け垣など生きものが生息できる隙間のある構造を街や住宅に取り入れる、自然環境に配慮したまちづくりのガイドライン作成。−市街地の緑地を守る施策づくり。
  2. 緑を守り育てるための相談所の設置。
  3. 庭園のある住宅作りのための指導要網を定める。
  4. 貴重な屋敷林については基金を設け、優先的に助成するなどの制度づくり。
  5. 保存すべき樹木や樹林への助成の増額や減税措置。
  6. 防災や景観を守るための資金で緑の質を高める。
C 自然を暮らしに生かす
  1. 草や木を暮らしに活かす楽しみや知恵を失ってきている。−自然を暮らしに生かすことが少なくなってしまった。
  1. 自然の循環を暮らしに活かす機会を増やす。−自然と人が共鳴するまち。
  1. 草や木を活かした講習会や見学会、学習会の実施。−野草の料理や草木染めなど。

理念4 水と緑をつなぎ、大切にするしくみづくり

   ― 自然に対する意識の改革、周知とシステムの構築

項目 現況 課題 方針
A 自然を知る・伝える
  1. 食物連鎖など生態系全体を把握する視点に乏しい。−一般的に理解されていない。
  2. 自然に対する意識の変化。−鑑賞を重視して人間と自然の相互関係を軽視するようになった。
  3. 子どもたちも学校や習い事など忙しすぎて自然に触れる機会が少ない。−現存する自然環境や生物の生息環境がどのような経緯で残されてきたのかが知られていない。
  4. 単に危険という理由で、行動範囲が限られており、子どもが触れられる身近な自然に近づきにくくなっている。
  5. 子どもから自然を奪ってばかりいる傾向。−人も自然なしでは生きていけない。
  6. 今の大人が子どもの時に必要だったものは、今の子どもたちにも必要で大切。
  7. 大人たちが要らないからといって社会に要らなくなったわけではない。
  8. 「緑」の減少により、人との関係が薄れてきている。
  9. 「緑」を守ってきた側と使う(見る)側の意識の違い。
  10. 自然環境としての農地の役割が認識されていない。
  11. 市内の自然環境を全域的に学ぶ機会が大人にも子どもにもない。
  12. 農地、水田に平気で空き缶やごみを捨てるといった市民のモラルの低下。
  1. 「自然は循環している」ことを伝える。
  2. ハケ周辺の環境を知らせる。
  3. まちの中の自然として一橋大学の環境を把握する機会を設ける。
  4. 国立の自然環境は二次的な自然(水田や雑木林など)であり、いわゆる天然林的な自然ではない。−人がかかわることで維持されてきた環境であり、生物生息環境と連携させて位置づける必要がある。
  5. 生きものに接する機会をふやす必要がある。
  6. 生きものと共に暮らすための価値観を作る。
  7. 城山やハケなどでの事故、事件等の抑制。
  8. 雑木林や用水路など身近な自然に接しながらの遊び方を子どもたちに伝える大人社会としてのしくみがない。
  9. 自然環境としての農地の維持、保全。−農産物の市内消費の促進。
  10. かかわることで維持されてきた環境(農地や雑木林など)の周知。
  11. 農地を公共緑地として考える学習機会を設ける。
  1. 子どもが自力で行動できる範囲に魚取りや虫取りができる自然環境を確保する。−年齢に応じて子ども達が自然の楽しさを味わえる場の創出。
  2. 地域の人々のくらしから学びその生活を最優先するとともに、交流を図ることで世代ごとの関わり方を伝えていく。−地域の方の農業体験の指導、若者や親などのリーダーの育成、子どもたちが遊び学ぶ場。
  3. 水と緑が地域でどんな働きをしてきたのか、しているのかを知る試み。−地域の緑の再発見。
  4. 学校、地域、家庭それぞれの場での環境学習の機会の設定。−地域ボランティアなどによる授業参加などを行い、自然環境にふれさせるとともに、生態系の認識につとめる、緑のネットワークや拠点をつなぐ遠足の実施など。
  5. 地域と共同の観察会や視察イベントの開催。−腐葉土作りなどの体験を通じて、昆虫や野鳥などを見る機会を増やす。
  6. 市民参加による自然と接する機会を設定。−生物の専門家や地権者との話し合いなど。
  7. 安全柵やパトロールなど地域と連携した事件、事故の予防策の設置。
  8. 崖線林などの不法投棄されたごみの除去や高木の枝払いなどへの市民ボランティアの参加を調整するコーディネート機関の設置。
  9. 府中用水や矢川、ママ下湧水などを利用した環境教育や生涯学習等での自然環境の周知。
  10. 定期的な大人と子どものまち歩きの実施。−市内の眺望点や農地など。
  11. 生業によって確保されてきた「二次的な自然環境」の周知。−総合学習や生涯学習など。
  12. 地場農産物を地元で消費するシステムの構築。−農産物の学校給食への供給、駅周辺などでの朝市など農産物の販売所の設置。
B 情報を集める・貯める
  1. 今ある「緑」の内容が把握されていない。
  2. 生息する動植物の情報が乏しい。−生物調査が行政レベルで行われていないため正確なデータがない。
  3. 鳥や樹木などの名前や生息する環境に対しての関心が低くなってきている。
  4. 自然環境全体を把握するデータ等がまとめられていない。
  5. 動植物の生息分布など生物に関しての情報が整理されていない。
  6. 水、土、光、大気などと生きものの関係が認識されていない。
  1. 市内の自然環境の状態の把握。
  2. 生きものの目から見た環境評価。
  3. 行政レベルで生物調査を行う。
  4. 市民側の持つ生物情報をとりまとめる必要がある。
  5. 現状の「緑」の量と質の把握。
  6. 自然環境の質の違いを把握する必要がある。−大学通りの緑とハケの緑の違いなど。
  7. 国立周辺に本来生息していた動植物の確認。
  8. 「大きな緑」「小さな緑」の質、内容、位置づけとそれぞれの役割を考える。
  9. 市域の自然環境の維持、管理の必要性の周知。−市民参加のしくみづくり。
  10. 子どもと共に大人が自然環境の重要性を認識する必要がある。
  11. 自然を含めた環境の変化の原因を再確認する必要がある。
  12. 「緑」の調査と専門家等による評価、基準の設置。
  13. 自然、緑に対する根本的な考え方、捉え方を広く一般に認識を促す必要がある。−防災、景観など用途に応じた緑の質を検討。
  14. 自然環境における循環体系を整理し、位置づける必要がある。
  1. 市民や専門家によるきめの細かい調査とデータ の収集と継続的な蓄積。
  2. 自然の質を診断、評価し、優先順位や守る基準を明確にする。−地域ごとの目標を設定し緑の回廊としてつなげていく。
  3. 収集、蓄積したデータをもとに、重点地域やネットワークの軸の具体化を図る。
  4. 自然に関する情報の共有、情報流通。−公共施設等への情報端末の設置による情報の供給。
  5. 市民の持つ生物情報を整理し、市内の自然環境の把握を行う。−とりまとめやマップづくりは市民参加で行う。
  6. 生きものの専門家の意見を活かし自然環境情報の把握と整理。−インターネットのホームページやマップ等による情報の公開。
  7. 昭和30年代以前とその後の生活環境の変化の内容の把握と認識。−地域へのヒアリングなど。
  8. 自然体験コースなどの設定。−地域の自然情報を生かした生涯学習など。
  9. 観察や維持管理作業などを通じて自然環境の周知を図り、一体的な保全につなげる。
  10. 地域の自然について、市民参加による副読本づくり。−学校や市民活動での活用。
  11. 地下水、下水、上水など、目に見えない水の循環を守るしくみつくり。
  12. 動植物が生息しやすい土壌の質の確保。−土づくり。
C 緑を守る・育てる
  1. 市内の緑被率が低く、その内容もきわめて悪い。−特に樹木、屋敷林、農地などは所有者個人で持ちこたえるには限界がきている。
  2. 都市になればなるほど民有地の緑が減少している。(緑被率の低下)
  3. 学校の緑化の方法は画一的である。
  4. 「大きな緑」が開発で「小さな緑」になっている。
  5. 商店街などの緑は新しいがあじけない。
  6. 公園の植栽や街路樹が画一的である。
  7. 開発等により木々や土の面が激減している。
  8. 特に樹齢の長い木や大木が、持ちこたえられるような状況にない。−一橋大学や民有地の雑木林の老齢化。
  9. 自然環境を計画的に保全する方法が確立されていない。
  10. 緑地保全の方法が確立されていない。
  11. 道路整備などに対して、環境への影響を回避したり最小化したりするミティゲーション※の対策がとりにくい。
  12. 「緑」を評価する基準、保全の方法が確立されていない。
  13. それぞれの樹木にふさわしい管理方法が取られていない。
  14. 緑を守るための水路の保全のあり方に問題がある。
  1. 緑地や生物生息環境の保全のためのしくみの確立。−資金づくり、市民参加など。
  2. 緑の基本計画との整合性を保つ。
  3. 地域の状況に応じた緑地保存手法の検討。−開発行為に際しての緑地確保制度の制定。
  4. 緑被率の目標と地域ごとの質の設定。
  5. まちづくりにおける緑の価値を見直し、きちんと位置づける。
  6. 私有地の緑を守るためのしくみづくり。
  7. 身近な緑の育成、雨水の活用。−雨水の浸透、再利用。
  8. 生きものの生息環境としての緑地の復元。
  9. 大木などを保全するしくみづくり。
  10. 商店街の緑化対策。−屋上緑化、壁面緑化、窓先の緑化、店先の緑化など。
  11. 高樹齢の雑木林の更新が進んでいない。
  12. 水路用地や里道の払い下げは行わない。
  13. 生産緑地以外の固定資産税などの優遇措置など農地に対する税制面の軽減を考える必要がある。
  14. 「里」の風景や環境を生かした区画整理。
  15. 市周辺を含めた「緑」の把握と連携。
  16. 自然環境や緑地の保全手法の確立。
  17. 地域の状況に合わせた生物生息環境などへの具体的な対応。
  18. 地区計画による地域合意の形成。
  19. 樹木の管理方法の確立。−昭和30年代頃の方法を見本に。
  1. 公共施設、企業、商店街等への適正な植樹に対する補助的な制度などの設置。
  2. 建築申請時に対応する緑地確保条例の制定
  3. 全体での緑被率30%確保を目標に地域ごとの目標を設定する。
  4. 行政や民間のイベントで生物生息に適した苗木の配布をする。−エコロジーの視点の育成。
  5. 公道の雨水浸透化の推進。−私道も補助金制度などにより砂利等への変更の奨励。
  6. 市民がみんなで居住地の緑を増やすための具体的な目標を設定する。−日野市は「家庭緑化の日」を設けている。
  7. 公園や学校の緑づくりや維持管理に市民や子どもたちが参画する。−小学校などでドングリを育てる環境教育、コミュニティガーデンなど。
  8. 公共的な敷地の接道部分は、画一的なフェンスではなく緑化を考える。
  9. 苗畑をつくる、高樹木の伐採、植樹等で、市内の雑木林の更新を図り、永続的保全を図る。
  10. 行政、市民、地権者などが協働で維持管理を行う。−交流を図ることで、現状の周知を図る。
  11. (仮)「緑の懇談会」など定期的な話し合いの場の設置
  12. 維持管理・作業市民グループの発足。−専門家などと意見交換を行いながら作業を進めるなど。
  13. 保全緑地の指定。−地区計画等での検討。
  14. 市街化調整区域に指定する。
  15. 生物生息域としての水田、畑など農地の維持、保全。−地権者を含めた話し合いの上、税制などを含めた保全手法を検討する。
  16. 緑を守るための具体的なアクション計画の策定。−基金の設置、市民と行政でつくる緑の協定、駐車場等の積極的な緑化の推奨。
  17. 地域ごと、土地利用ごとに緑被率等の具体的な目標を設定する。
  18. 農地や緑地への定期借地権の活用。−固定資産税、相続税に対しての支援。
  19. 都や国を含む行政やトラストによる買い上げ。
  20. 専門家等の意見を取り入れた樹木の管理作業の実施。−地域の状況に合わせた植栽など。
D 自然をむすぶ・つなぐ
  1. 自然環境の分断がとまらない。(水、生きもの、緑地空間など)−自然が循環するものであることが忘れられている。
  2. 緑地を含めた自然環境の保全に関わる市民が少ない。
  3. 公園などで落ち葉や剪定した枝などがごみとして扱われている。−自然の循環を市民も行政も見落としている。
  4. 環境保全に対する行政の方針と熱意が見えにくい。
  5. 自然保全活動などを行う市民団体の内容が把握、周知されていない。−活動そのものが知られていない。
  6. 関心のある市民とフィールドをむすぶシステムがない。
  1. 自然環境のネットワークの再構築。
  2. 全く改変された場所や地域において、新しい生きもののネットワークをつくる。−街路樹や工場にも生態系や生物への配慮を盛り込む、ビオトープネットワークの実現。
  3. 今ある水と緑を生かす。−水でつなぐ、崖線でつなぐ、緑地でつなぐ、道でつなぐ、庭でつなぐ。
  4. 落ち葉や剪定した枝の活用。−自然循環の研究と見直し。
  5. 下草刈りや枝払いなど市民参加の維持管理手法の確立。
  6. 生きものと人、人と人をつなぐ情報交流機関の設置。−自然保全活動の把握と調整。
  1. 今ある生きものの生息する環境のネットワークの保全、拡大を図る。−生きものの調査と再評価、必ず緑はつなげて残す。
  2. 生業などで培われた二次的な自然環境が、宅地化や生活環境の移り変わりなどによって途切れており、この切れたネットワークをつなぎ直す必要がある。−再緑化や代償の環境を確保するといった手法。(ミティゲーション)
  3. 人の入る場所、生きもののための場所(サンクチュアリ※など)を設定し、自然を壊さない範囲で利用できる場所を作る。−その理由も伝える、原っぱ(低茎草地)や緑地を身近に点在させる、グランドの周辺の草刈りを控える、観察会等での対応など。
  4. 落ち葉などの土づくりへの転換。−共生の視点の育成。
  5. 隣接市の自然環境との連携、ネットワークづくりを目指す。−崖線、川、水路などの環境の連続性の確保、維持。
  6. 市民と行政が協働で行うコストのかからない維持管理システムづくり。
  7. 環境保全を行うボランティア活動の情報発信、PRの充実と参加の拡充。

※注:ミティゲーション(Mitigation/代償措置):開発の際に生じる環境への影響を,何らかの措置により緩和するという概念。「回避」「最小化」「低減」「代償(補償)」などの措置がある。
※注:サンクチュアリ(sanctuary):聖域。自然環境においては動植物の自然保護領域を意味する用語。

「守り、つなげる、国立の自然 ―共生と循環―」


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